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Bob Dylan-DYLAN CHANGIN’

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毎週日曜日は、ボブ・ディランの各国盤シングルをご紹介しています。今回は番外編。ブートシングルです。


この『DYLAN CHANGIN’』は、ボブ・ディランの未発表音源やライヴ音源を収録したヨーロッパ製の海賊盤7インチ・シングルのシリーズで、資料上では1983年頃に制作されたものとされています。Vol.1からVol.5までの全5枚で構成され、カタログ番号もELF 090からELF 094まで連番になっています。白地に赤い文字で「DYLAN CHANGIN’」と大きく記されたジャケットは全巻でデザインが統一され、ディランのモノクロ写真だけを変えるという簡素な作りですが、盤のラベルは赤、緑、黄、青、オレンジと色を変えてあり、5枚を並べると一つのシリーズであることがよく分かります。

このシリーズが興味深いのは、単に珍しいディランの音源を収録しているだけでなく、1980年代初頭の海賊盤文化そのものをよく伝えている点です。当時は現在のようにディランの録音セッションについて詳細な研究が進んでおらず、公式の未発表音源集もほとんど存在していませんでした。そのため、コレクターの間で流通していたテープをもとに海賊盤が制作され、録音年月日や音源の出所についても推測を交えた記載が少なくありませんでした。この『CHANGIN’』にも、そうした時代ならではの曖昧さが随所に見られます。

Vol.1(ELF 090)のジャケットには「Kingsport Town」と「Watcha Gonna Do」が収録されていると記載され、いずれも「Columbia test pressing, 1961?」とされています。しかし現在では、これらは1962年の『The Freewheelin’ Bob Dylan』制作期に録音されたアウトテイクであることが確認されています。「1961?」と疑問符まで付けているところに、制作当時の海賊盤業者も音源の正確な出所を把握できていなかったことがうかがえます。

Vol.2(ELF 091)はさらに面白く、ジャケットではA面が「Mr. Tambourine Man」のWitmark & Sonsデモ、B面が1965年の「If You Gotta Go, Go Now」と「Don’t Think Twice, It’s All Right」とされています。しかし、詳細なディランの海賊盤資料によれば、ジャケット記載の曲目と実際の収録内容には食い違いがあり、このシリーズ全体についても曲目表記が正確ではないことが指摘されています。こうした「ジャケットに書いてあるものと実際に針を落として出てくるものが違う」という現象も、当時の海賊盤では決して珍しいものではありませんでした。

Vol.3(ELF 092)になると、さらに混沌としてきます。ジャケットには1966年メルボルン公演の「Just Like A Woman」と、1973年の『Pat Garrett & Billy the Kid』セッションからのアウトテイクとされる「Rio Pecos Blues」が記載されています。しかし後者については、ディラン本人の演奏ではないとする資料もあります。出所不明のテープが「ディランの未発表音源」として流通し、そのままレコードになってしまうという、古い海賊盤の世界を象徴するような一枚です。

Vol.4(ELF 093)には、ジャケット上では1975年のBette Midlerとのセッションからのアウトテイクとされる「Buckets Of Rain」と、1976年11月25日のサンフランシスコでの「Hazel」が記載されています。一方、実際の収録内容については別の音源が確認されており、ここでもジャケットと盤の内容が一致しないという、このシリーズ特有の面白さがあります。1976年11月25日という日付は、ザ・バンドの解散コンサートとして有名な「The Last Waltz」が行われた日でもあり、ディランの1970年代の活動を追っていた当時のコレクターには非常に魅力的な表記だったと思われます。

そしてVol.5(ELF 094)まで含めて5枚を見比べると、このシリーズにはもう一つ大きな特徴があることに気付きます。ジャケットには堂々と「DYLAN」と書かれているにもかかわらず、レコードそのもののラベルにはボブ・ディランの名前も、本来の曲名も一切記載されていないのです。ELF 090では「FIREBIRDS/Heavy Times」「FIREBIRDS/More Feelin’」、ELF 091では「FIREBIRDS/Tired」「FIREBIRDS/The Reality」、ELF 092では「SUBMISSION/Vicious」「SUBMISSION/Lydon」、ELF 093では「SUBMISSION/Sexgun」「SUBMISSION/Bolloks」、ELF 094では「DREAMLAND/Futureworld」「DREAMLAND/Tomorrowland」という、まったく別のアーティスト名と曲名が印刷されています。

特に「Submission」「Vicious」「Lydon」「Sexgun」「Bolloks」といった言葉は、Sex PistolsやJohnny Lydonを明らかに連想させるもので、海賊盤業者の遊び心と同時に、盤面だけを見てもディランの海賊盤だと分からないようにする意図もあったと考えられます。ラベル外周にはドイツ語で、複製、上演、放送、貸与などを禁ずる旨の、正規盤を思わせる著作権表示まで印刷されています。違法な海賊盤にもっともらしい権利表示が入っているというのも、何とも皮肉なところです。中央に描かれたサングラス姿の老人の風刺画も含め、このシリーズ独特の雰囲気を作っています。

現在では、これらに収録された音源のかなりの部分が、ディランの公式「Bootleg Series」などによって正規に発表され、録音年月日やセッションの詳細も明らかになっています。そのため、発売当時のような「ここでしか聴けないディラン」という意味での価値は薄くなりました。しかし逆に、現在このシリーズを見ると、公式のアーカイヴが整備される以前に、世界中のディラン・コレクターがどのように未発表音源を探し、交換し、それを海賊盤業者がどのような形で商品化していたのかを知ることのできる歴史資料としての面白さが際立っています。

とりわけ今回のものは、ELF 090、091、092、093、094というVol.1からVol.5までが揃っています。ジャケットの経年による汚れや擦れも含めて、1980年代のブートレッグらしい姿がそのまま残されています。1枚だけなら珍しいディランの海賊盤ですが、5枚が連番で揃うと、「CHANGIN’」という一つのシリーズとして見ることができます。音源そのもの以上に、偽名や偽曲名、誤った録音情報、統一されたジャケット、色違いのラベルといったすべてを含めて、公式のディスコグラフィーとは別の場所で形成されてきたボブ・ディランのブートレッグ文化を象徴する、いかにも1980年代らしいコレクターズ・アイテムといえるでしょう。

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